遺産分割 遺言書

遺言書を作るべきケース② 会社経営をしている場合

Fさん

私は、中小企業の経営者をやっているのですが、これまでとにかく必死で働いて、ここまで会社を大きくしてきました。
ただ、このところ体の調子が悪くて、もし、自分に何かあったらと不安なのです。
いずれ相続となったときのために、今からできることや気を付けておくことはありませんか。

事業を行っている場合、相続が発生した場合の対策を何もとっていないと、お家騒動につながることもあるので注意が必要です。

司法書士
Fさん

お家騒動ですか。
一流企業で、お家騒動になっているというニュースを聞くことはままありますが。

規模関係なく、お家騒動の可能性はあるんですよ。
どういうことかと言いますと、会社の経営をしている場合、その人が亡くなると、個人的な財産(たとえば預貯金や自宅不動産、車など)のほかに、自社株についても相続が発生します。

司法書士
Fさん

あー、株式も相続されるんですね。

そうです。
ただ、相続人が複数いる場合、被相続人が有していた株式は、相続によって、各相続人の法定相続分に応じて当然に分割されるわけではありません
遺産分割協議がなされるまでは、相続人が準共有することになるとされています。
ですから、遺産分割協議をして、誰が株式を承継し、株主としての権利を行使するのかを決めなければなりません

司法書士
Fさん

なんだか難しいですね。

ですが、中小企業の場合、オーナー経営者がほとんどの株式を持っていることが多いため、株式の承継者を決めるというのは、会社を継ぐ人を決めることとほぼ同じ意味を持ってきます。
誰が後継者になるのか相続人間で争いになり、遺産分割協議がまとまらず紛糾することがあります。
具体例をあげてみましょう。以下の図を見てください。

司法書士
会社経営している場合

この図の事例において、長男が父の経営する株式会社の取締役を務めており、父からの信頼も厚かったとします。
しかし、経営者の妻は、内心、次男に会社を継がせたいと考えていました。
 そして、父が不慮の事故で他界してしまい、遺産分割では株式の承継者をめぐり争いになって、なかなか協議がまとまりませんでした。

司法書士
Fさん

協議がまとまらない場合、どうなるのですか?

遺産分割協議がまとまらない場合には、その株式は準共有のままとなり、「株式の権利行使者」を決めることになります(会社法106条)。
そして、この権利行使者については、持分価格に従い、その過半数で決めることとなっています。
 したがって、この事例の場合、妻+次男の法定相続分を足すと、3/4となり過半数を満たすこととなりますので、次男を権利行使者として指定できるのです。

司法書士

Fさん

これまで長男が会社の取締役をやっていたのに、長男以外の人が権利行使者になることもできるんですか。

はい。
更には、もし、その次男が権利行使できる議決権数が、概ね、株主総会の出席株主の議決権の過半数を満たす場合には、長男を取締役から解任し、自己が取締役になることもできてしまいます

司法書士
Fさん

長男としては、たまったものではないですね。

このようなお家騒動が勃発すると、従業員のやる気が削がれ、業績が悪化したり、取引関係者が付き合いを控えるようになり、会社の経営に大きな影響を及ぼすことになってしまいます

司法書士
Fさん

会社のイメージも悪くなりますしね。

ですから、会社の経営者は、不慮の事態に備え、後継者選びや財産の承継についてきちんと考えておかなければなりません
また、株式以外に相続財産がほとんどない場合にも、株式を承継しない相続人に不満が募り、争いになることが考えられます。
死後の財産承継について争いを予防するため、遺言書を残しておくことが大切です。

司法書士
Fさん

参考になりました。

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